【9】人形のつかい方の注意

藤原玄洋(日本ウニマ事務局)

(1) 操者は見えてもかまわない
 ふつう、手づかい人形をつかう場合は、ケコミというついたて状の舞台か幕のかげに操者はかくれ、
 観客には人形だけ見せることが多い。                            

 この場合、操者は人形をもった手を高く上げ、いくらかひざを曲げて、操者自身の頭を幕のかげに 
 かくして、人形を動かすことになる。                            

 人形が小さいうちは、操者がケコミに隠れるために、首をあまり曲げる必要はないが、それでも  
 子どもの場合、自分の頭をかくして人形だけを幕の上に出す状態に人形をかまえることは、かなり 
 無理がある。                                       

 この無理な姿勢をさせるということには問題がある。人形をうまく動かすことができなくなるのだ。
 せりふを大きな声でしゃべることもできない。                        

 歌もうまくうたうことができない。手や指を充分動かして、演技することもできない。      

 歌ったり、しゃべったりが楽にできる状態であってこそ手は自由に動き、人形も軽やかに動かす  
 ことができるのだ。                                    

 したがって子どもたちに人形をつかわせて劇をするとき、けっして無理な姿勢をとらせるような  
 条件を強いてはいけない。                                 

 幕を張って、ケコミの舞台を作ったとしても、幕の上から操者の顔や上半身が見えても、     
 いっこうにさしつかえはない。                               

 何よりも大切なのは、子どもたちがらくに楽しく人形を動かすことに"集中"できることだ。    

 高学年であっても、ケコミのかげにかくれるということに、こだわる必要はない。        

 前述するように操者が積極的に、姿を現わして人形を動かす〈出づかい〉という演出技法も    
 あるからだ。                                       

stage

(2) 人形の姿勢に注意する
 人形をつかうとき、操者はケコミ幕から見えてもかまわないと前に述べたが、それは人形の姿勢が
 ちゃんとしていることが大切だからである。                        

 人形の細かい演技をいくらやってみても、その人形がまっすぐ立っているのか、坐っているのか、
 倒れているのかがあいまいでは何もならない。                       
 まず人形の基本の姿勢がちゃんとできることが大切である。                 

 まず全身および腕(特に肩と手首)から力をぬいてリラックスさせることだ。         

 参考図をよく観察してほしいのだが、"ひじ"のところをやや曲げて、"ひじ"から上を床に対して
 まっすぐにする。                                    

 次に手首をやや前に曲げて、首に差した人差し指をまっすぐにして、人形の首に正面を向かせる。
 これが基本姿勢である。                                 

 だが最初からすぐできるわけはなく、何度もやっているうちに次第に上達するのである。    
 最初はひじを少し曲げ、操者が常に人形の重心の下にいるよう心がけるだけでよい。      

 操者が人形について移動していかないで、腕を前に伸ばすだけで人形を前に歩かせると、    
 観客からは人形が倒れたようで、前に歩いているようには見えない。             

 ひじの高さを一定に保つことと、人形の姿勢に、充分注意をはらうことが大切である。     


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