【4】糸あやつり人形 String Puppet

藤原玄洋(日本ウニマ事務局)

 マリオネットと呼ばれることも多く、糸や針金で操作する人形の総称である。      

糸あやつり人形というと、糸の本数が多く複雑に思われているが、さまざまな   
 形式の人形がある。                              
 糸あやつり人形は、最初から糸で操作されているものから、すべてが生まれた    
 わけではなく、前述の上からの棒づかい人形であったと考えられる。だんだん    
 複雑になるにしたがい、手・足に補助的な糸がつき、やがて全部が糸だけで     
 あやつる構造に発達したと思われる。                      
 このことを知っておくことは、糸あやつり人形をはじめるときには、特に重要    
 なことである。                                
 人形の重さを支える両肩の糸、首、両手、両足を動かす各2本の糸とで、九本の   
 糸でつかうものが普通の形式である。糸のかわりに部分的に針金をつかうこともある。
 糸を受ける操作器のことを〈コントローラー〉または〈吊り手〉(つりて)と呼ぶ。  
 トンボ型の〈水平式〉のものと、たて型になった〈階層式〉のものとがある。    
 どちらかというと、糸あやつり人形はヨーロッパで盛んに行なわれている。     
 日本では第二次世界大戦までは、現代人形劇において主流的役割をはたしていたのに、
 今日では活発に行なわれているとはいえない。それはその後、さまざまな構造の   
 人形が開発されたことにもよるが、むしろ舞台的条件や、構造の複雑さから敬遠され 
 ているように思える。                            

marionet.gif

(1) 針金を使った糸あやつり人形
 糸数の多い糸あやつり人形(D図)も、つかっているうちにだんだん上手になっていくが、
 やはり前述の手づかい人形や、棒づかい人形のようなわけにはなかなかいかない。    
 首に針金をつかった構造の人形、C図の人形からはじめるといいだろう。        
 そうすれば人形がフラフラしないですむので、床から人形が浮いたり、逆に人形がダラリと
 たれたりしないで、棒づかい人形をつかう感じで、動かすことができるだろう。     

(2) 2本糸で動かせる糸あやつり人形
 糸あやつり人形というと、糸数の多い複雑なものを考えがちだが、A図の犬の人形のように、
 胴体と首を円筒の空容器で作ったものに、ブラブラの足や耳をつけたものもある。この人形は
 2本の糸を簡単な丸棒のコントローラーに結びつけただけだが、何本もの糸で動かす犬の人形
 より、はるかに生きいきと動かすことができる。                    
 何本もの糸をつけて複雑にすることが、よく動く人形をつくることには、必ずしもならない。
 簡単な構造の人形でもやり方しだいで楽しい人形劇を、つくることができるのだから、やり方
 にこそ工夫をこらしてもらいたい。                          

(3) 糸で人形をあやつるコツ
 先に述べたように棒の先のものを動かすことは、比較的容易であるが、糸の先のものを  
 思ったように動かすには、ちょっとした注意が必要だ。                
 糸に吊した玉を横に動かすとき、糸を横に振っただけでは、玉はブラブラ揺れるだけで、 
 なかなか決まった位置には止まらない。玉を少し引き上げるように横に移動して止めると、
 玉は思った位置に止めることができる。                       
 糸は棒と違って直接的に力を伝えにくい。一気に力を入れてグッと動かすのは禁物である。
糸に力の伝わるのを確かめて、棒でやる時よりもゆっくりやらなくてはならない。  
 また細い糸や長い糸になるとつかいにくくなり、糸ももつれやすくなる。糸は短めにして、
 タコ糸のような太目の糸をつかうと動かしやすい。                  
 糸を太くすると糸が目立って気になると思われるが、それほど気にはならない。むしろ  
 人形を確実に動かせることの方が大切である。コントローラーのように堅いものに糸を  
 つけるときは、結び目がほどけやすくなるので、しっかりと結んでおく。        


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